Vol.23 No.7
【特 集】 新基本法下の水田農業


新しい農政、新しい農業の展開
大森 昭彦
1.新基本法の領域
2.基本計画と施策の推進
3.川を漕いで上る
4.技術と夢と希望
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これからの米を支える技術開発
赤間 芳洋
 わが国では食糧自給率は供給熱量べ一スで41%,穀物べ一スで28%(平成9年)の低水準になっており,米の生産過剰に起因して,96万haの水田で生産調整を行わざるを得ない状態に至っている。 また,耕地の利用率,特に水田の利用率は今なお低下傾向にあり,基幹的農業後継者は不足し,農業者の高齢化が進行している。米については,このような問題を克服するため, 当面の課題はもとより,将来を見越した上で,省力・低コスト,品質の向上・多様化,環境負荷の軽減という重要な問題について中長期的技術対策を地道に講じておく必要がある。
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“売れる麦”研究成果の活用
山田 利昭
 小麦,六条大麦,二条大麦及び裸麦について,最近育成された主な品種及び近く品種となることが期待される有望系統の概要を述べるとともに, 麦類の需要拡大を狙いとした麦類品種育成の新たな動きを紹介する。
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わが国の大豆品種開発の現状
酒井 真次
 水田を利用した本格的な大豆生産がされようとしている。生産性の向上とともに実需者のニーズを踏まえた品質向上技術の開発が喫緊の課題である。 大豆品種開発の最前線では,冷害に対する耐性,病虫害抵抗性など生産の安定化に向けた品種開発を展開している。また,青臭みがない大豆のように, 新たな需要を創出するような品種も生まれている。
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飼料イネによる水田活用と耕畜連携
佐藤 純一
 アジアモンスーン気候のわが国の夏期に適した水稲をホールクロップで飼料に調製して利用する飼料イネ技術は,転作飼料作が頭打ちの今日, 水田の活用と飼料自給率向上の両面から問題の解決となる。飼料イネの収量は飼料作物に肩を並べられる可能性があり,生産コストは輸入牧草より安い。 技術の普及には稲作生産組織等が生産から流通まで行って,稲作と畜産を結びつけ,堆肥の還元,稲わら利用まで進める営農システムが必須である。
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水田活用の新しい栽培技術
長野間 宏
 「食料・農業・農村基本計画」に示された麦,大豆などの作付面積拡大,自給率向上を図るには,安定品質,安定収量を得るための技術の確立と普及が重要であるとともに, 圃場の大区画化,生産組織の再構築などに対応した省力的,高能率の作業技術の開発が必要である。また,作物切り替え時の作業方法の工夫により土地利用率の向上と生産の安定化が図られる。
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環境保全と多収をめざした輪作技術
有原 丈二
 農用地からの窒素やリン酸の流出による周辺環境の汚染が問題となってきており,環境を汚染することなく生産性の高い農業を実現することが強く求められている。 土壌窒素は圃場に作物を栽培して吸収させることが溶脱防止の最善の方法である。夏作物収穫後に土壌の無機態窒素は増加し,秋から春に下方に流れる土壌水分とともに溶脱する。 それを防ぐには,冬作物を栽培することが重要である。畑地から土壌粒子が周辺水系に流れ込むと,土壌粒子からリン酸が溶出し,富栄養化の原因となる。 その防止にはリン酸施用量の低減が必要であるが,輪作は菌根菌と作物の共生を促進してリン酸利用効率を高める効果があり,リン酸施用量低減に有効な手段である。
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麦・大豆・飼料作物を導入した水田営農の展開と水田利用方式の構築
梅本 雅
 米価の下落や転作受託の増加,水田農業経営確立対策の推進等のもとで,水田畑作物の定着に係る経営環境は大きく変わってきている。 これら環境変動を先取りしつつ麦や大豆を導入している大規模な水田作経営,法人経営,集落営農組織の3事例からその定着条件を整理すると, (1)担い手への農地や作業の集積と転作田の受託面積の安定化,(2)作付地の団地化等を図るための土地利用調整システムの構築, (3)実需者が求める品質の生産物を一定ロット,安定的に供給するための産地形成,(4)大面積を効率的に作業しつつ安定収量を確保するための技術対策が指摘できる。 すなわち,担い手の形成と併せた合理的な水田利用方式の構築が必要である。
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