Vol.23 No.8
【特 集】 プロパテント時代の特許戦略


日本版プロパテント政策の推進について知的創造サイクルの創設
木原 美武
 最近、プロパテントという言葉がよく使われるが,これは特許重視,知的財産重視ということを意味する。そもそもプロパテントという言葉は, 米国で1980年代当初からとられた特許重視政策を指して用いられてきた。その反対がアンチパテントという言葉で, 一般的にはアンチパテントの時代は独禁政策が強いということになっている(米国では,建国時から1930年頃までが第一期プロパテント時代で, それが世界恐慌を契機にアンチパテントとなっていた。)

 本文は,まず日本の特許を取りまく状況を述べ,途中で米国の特許政策の転換の話を加え,最後に,今,特許庁としてどういう政策を展開しているのかという話をしたい。
←Vol.23インデックスページに戻る

経営資源としての特許
大屋 憲一
 企業の研究開発は,その販売力の基礎であり,その果実は特許として保護して有効活用し,研究開発費用の回収に努めなければならない。したがって, 特許あるいは特許出願の客観的な価値を決定して,その研究開発の有効性が評価されるべきである。

 特許の評価に使用される優れた方法は,割引キャッシュフロー法により,特許に起因する正味のキャッシュフローまたはロイヤルティを資本化する方法である。 市場を基礎にしたアプローチは,比較可能な市場取引情報が存在する場合には魅力的である。ヒストリカル・コスト総額法は,財産への出費とその価値との間に直接の相関関係がないので, 客観的とはいえない。
←Vol.23インデックスページに戻る

遺伝子分野における特許戦略
美濃部 侑三
 ゲノム研究の進展により遺伝子特許を目指す機能解析が緊急を要する局面になってきた。遺伝子特許の獲得はバイオテクノロジー産業を推進する前提条件であるが, 経済的効果を考慮した開発戦略が必要である。とくに,ヒトや植物などの多細胞生物においては遺伝的形質の原因となる遺伝子の解明が重要である。 遺伝子特許をめぐる取り組みでは,アメリカの開発体制に比べればわが国の立ち遅れは著しく,重点的な開発戦略の構築が急がれる。
←Vol.23インデックスページに戻る

大学研究成果の技術移転と広域TLO
斉藤 浩
 大学研究成果の技術移転により,日本オリジナルの産業技術を育成したい。産業技術の源泉を「膨大な人材資源を抱える大学の研究成果」に求めたい。 技術移転の重要な仲介役がTLOである。TLO整備のために必要な法律も制定され,規制緩和もなされた。

 TLO成功の鍵はPEC:Professional Evaluator & Coordinatorである。十分な質と量のPECを確保するには資金と時間とTLOの広域ネットワークの構築が不可欠である。
←Vol.23インデックスページに戻る

農林水産省における研究成果と特許等の移転促進
堀井 正治
 農林水産省には29の試験研究機関があり,その研究対象は育種・栽培や病害虫の防除,家畜の疫病予防,農業工学,水畜,林野などのプレハーベスト分野から, ポストハーベストと呼ばれる食品の流通・貯蔵・加工,さらには酵素化学,遺伝子工学等広範囲に及んでいる。永年にわたり数多くの技術に関する優れた研究成果が生み出されてきたが, 近年,その成果を特許や知的財産という感覚でも捉えるようになり,その活用が積極的に図られようとしている。
←Vol.23インデックスページに戻る