Vol.26 No.4
【特 集】 農産物安全性のための技術開発最前線


食品の安全性とリスクアナリシス
 −コーデックス委員会と食品安全性−
(独)食品総合研究所    山田 友紀子
 近年、食中毒、BSEとnvCJDとの関係、そのほか健康に悪影響を及ぼすか、及ぼす可能性のある問題が報告されたことに伴い、食品の安全性に対する消費者の懸念が日本を含む世界各国で高まっている。 本報告は、食品の安全性に係わる基本概念とともに、国際食品規格委員会(Codex Alimentarius Commission)のリスクアナリシス関連の勧告を解説する。
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農林水産物の食品としての微生物学的安全性確保
(独)食品総合研究所    一色 賢司
 1996年の大腸菌O157集団感染症発生により、食中毒対策に加えて感染症対策が必要であることが認識された。特に生食される野菜サラダや魚の刺身等は、食中毒菌を媒介する可能性を否定できない。 分業が進んだ食生活におけるリスク低減のための、科学技術の活用と国民(生活者)全員の役割分担のあり方が模索されている。海外で生産された農林水産物も生食する機会が増え、 その安全性への懸念もある。食品としての農林水産物の安全性確保においても、汚染が起こる前に汚染を防ぐことが、リスクの低減化の鍵である。汚染は、農場から食卓までのどの時点においても発生し得ることを、 国民全員が自覚すべきである。
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有機質資材などの農業利用と重金属汚染
(独)農業環境技術研究所    樋口 太重
 本稿では、持続的な作物生産を保証する肥料・有機性資材などの土壌施用をめぐって、付随的に負荷される農耕地の重金属汚染について検証する。まず、有害重金属の毒性評価、 重金属をとりまく法規制、土壌の重金属の賦存量、有機資材などの重金属濃度、土壌施用に伴う重金属の集積などの視点から述べ、安全性の課題を考える。
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農薬の安全性評価
(独)農業環境技術研究所    上路 雅子
 農薬は人および環境への毒性や残留性などに間する各種試験の結果から安全性評価が行われ、定められた使用法を遵守することで安全性が確保されている。 しかし、輸入農産物中の残留農薬基準値を超過した残留農薬の実態、また、全国各地での無登録農薬の使用が明らかになった。これらに対し、残留農薬の検査の強化や無登録農薬の販売・ 使用への立ち入り検査および当該農薬使用の農産物の出荷自粛など行政指導が行われている。さらに、消費者が求める「食の安全」を確保するため、農薬取締法および食品衛生法が改正された。
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食品アレルギーとアレルゲンの検査技術
東京大学 大学院農学生命科学研究科    伊勢 渉
 現在食品アレルギーは増加の一途をだどっており、幼小児のみならず成人患者も増加しつつある。わが国においては卵、牛乳、小麦、そば、えびなどがアレルギー原因食品の上位を占めている。 食品中に含まれるアレルギー誘発性物質(アレルゲン)の同定、解析が精力的に行われており、アレルゲンとなるタンパク質に共通した性質も見いだされている。アレルゲン性の検査は in vitroでは主にIgE抗体との統合性を指標に行われ、またin vivoでは皮膚試験やアレルゲンの除去・負荷試験が行われている。
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農産物のトレーサビリティ技術
(独)食品総合研究所    杉山 純一
 トレーサビリティは、(1)食品事故発生時の追跡や回収を容易にし、(2)生産情報などを提供して消費者と「顔の見える関係」を築く、ための1手段であり、最終目的は、 食の安全・安心の確保にある。手段が目的化すると、「全てを記録することがトレーサビリティ」という誤解を生じるが、実用とするにはコストと手間を考慮しながら、 まず、できることから始める必要がある。青果ネットカタログ「SEICA」は、インターネット環境さえあれば、誰でも無料で情報発信できる世界で初めての農産物を対象にしたXMLWebサービスであり、 今後、さまざまな応用展開が企画されている。
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