Vol.34 No.8
【特 集】 国産ダイズの安定生産と増収をめざして


我が国のダイズ生産の現状と課題
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所    羽鹿 牧太
 国産ダイズは高品質であるが年次変動が大きく単収が低い。このため,実需者と生産者の双方から安定多収化が強く求められている。我が国の主な低収要因としては冷害,降雨・湿害,台風害,干ばつ,雑草害,病虫害などが挙げられ,これらを解決するためには品種と栽培の両面からの対策が必要である。またマーカーを利用した病虫害抵抗性などのピンポイント改良と収量選抜の組合せによる新たな品種育成が始まっており,地下灌漑システム,浅耕播種などの新たな播種技術,生育期除草剤,殺菌剤の種子粉衣など新たな栽培技術とともにダイズ生産の安定多収化に寄与することが期待される。
(キーワード:ダイズ,生産,低収要因,品種育成,マーカー)
←Vol.34インデックスページに戻る

ダイズの病虫害抵抗性育種
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所    山田 直弘
 ダイズの病虫害抵抗性育種について,農研機構と旧指定試験地を中心とする公的研究機関の取り組み状況を概説する。ダイズモザイク病やダイズシストセンチュウに対してはこれまでに多数の抵抗性品種を育成し,さらにDNAマーカーを用いて抵抗性の高度化を図っている。各種病虫害のうち,早晩性に影響されない抵抗性遺伝資源が存在し,再現性の高い検定法が確立されているものについては,近年国内外で次々に抵抗性遺伝子の座乗位置が特定されてきており,これらの情報に基づいてDNAマーカーの開発と選抜への利用を図っている。
(キーワード:ダイズ,病虫害抵抗性,育種,マーカー選抜)
←Vol.34インデックスページに戻る

北海道におけるダイズ耐冷性・病虫害抵抗性育種の現状と今後
(地独)北海道立総合研究機構 中央農業試験場    大西 志全
 北海道では,冷害・ダイズシストセンチュウ・わい化病がダイズ生産を阻害してきた主な要因である。近年これらに対する品種育成が進み,多くの品種が開発されてきた。耐冷性については,低温条件での収量・品質の低下に対して検定法の開発と選抜が行われてきた。ダイズシストセンチュウ抵抗性については,遺伝資源の導入とセンチュウ汚染圃場での地道な選抜が成果をあげている。また,わい化病抵抗性については,新しい抵抗性母本とDNAマーカーの活用によって品種改良が加速している。本稿では,これまでの北海道におけるダイズ育種の成果を紹介するとともに,これからのダイズ育種についても述べる。
(キーワード:ダイズ,耐冷性,センチュウ,わい化病,DNAマーカー)
←Vol.34インデックスページに戻る

ハスモンヨトウ抵抗性ダイズ品種の育成と課題
(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター     大木 信彦・高橋 将一・高橋 幹
(独)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター     小松 邦彦
 ハスモンヨトウはダイズの重要害虫であり,抵抗性品種の育成が望まれている。九州沖縄農業研究センターでは,DNAマーカーを用いて西日本の主力品種「フクユタカ」にハスモンヨトウ抵抗性遺伝子を付与した豆腐用品種「フクミノリ」を育成した。「フクミノリ」のハスモンヨトウ抵抗性は「フクユタカ」よりも強く,収量,豆腐加工適性等の農業形質は「フクユタカ」と同等であった。また,納豆用品種として育成された「すずかれん」は,ハスモンヨトウ抵抗性,葉焼病抵抗性を有しており,ダイズ収量の安定化に寄与すると期待されている。
(キーワード:ハスモンヨトウ,抵抗性遺伝子,DNAマーカー,戻し交配)
←Vol.34インデックスページに戻る

ダイズ茎疫病抵抗性品種育成の現状と課題
兵庫県立農林水産技術総合センター    杉本 琢真
 近年,全国各地のダイズ栽培圃場においてダイズ茎疫病の発生が増加している。本稿では茎疫病抵抗性について真性抵抗性と圃場抵抗性の面から国内外の研究を紹介する。真性抵抗性については国内で利用可能な抵抗性遺伝子,ならびに真性抵抗性DNAマーカーの開発とマーカーを利用した品種育成の事例を示す。圃場抵抗性については再現性の高い抵抗性検定方法ならびに抵抗性母本の選抜事 例を紹介する。また,全体を通じて茎疫病抵抗性品種の今後の課題について述べる。
(キーワード:ダイズ,茎疫病,抵抗性遺伝子,DNAマーカー)
←Vol.34インデックスページに戻る

ダイズの高位安定生産を可能とする地下水位制御技術
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター    島田 信二
 日本のダイズ作の8割を占める水田転換畑では湿害が発生しやすく,さらに本州以南では梅雨によりその被害が助長されやすい。一方,ダイズの多収化には多量の水が必要で,盛夏には水田転換畑でも干ばつが頻発し,これらの土壌の乾湿がダイズの生産性を大きく低下させている。新たに開発された地下水位制御システム(FOEAS)は地下水位を容易に制御可能であり,このシステムを活用することにより,ダイズの根粒窒素固定,光合成が高まり増収するとともに,作業性も向上できることが明らかになった。2010年度から農水省委託プロジェクトにおいて,水田の地下水位制御技術を水稲,麦類,野菜作へ活用する技術開発が開始された。
(キーワード:ダイズ,地下水位,多収,FOEAS)
←Vol.34インデックスページに戻る

ダイズの新たな耕うん・播種技術
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター    細川 寿
 ダイズの作付けは,8割以上が水田転換畑で行われており,湿害が大きな問題となっている。特に播種時期は,梅雨前から梅雨の合間に行われるため,播種時の湿害対策は重要な課題である。また,圃場条件によっては,強い降雨後の乾燥により硬い土膜ができ,発芽が抑制される場合がある。一方,ダイズ栽培でも規模拡大が行われ,降雨等天候の厳しい状況でも,その合間に作業が可能な高能率の播種方法が重要である。全国の研究機関,メーカー等では,これらに対応した研究を実施し,その多くは普及しつつある。これらの技術が,今後のダイズの安定栽培に向けた基盤技術となり,収量の安定的な増加につながると考えている。
(キーワード:ダイズ,湿害,畝立て,不耕起,排水)
←Vol.34インデックスページに戻る

微生物によるダイズの出芽不良とその対策
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター    加藤 雅康
 ダイズは主に水田転換畑で栽培され,関東地方以西では梅雨時期に播種される。播種後の土壌水分が高くなりやすく,出芽不良が頻繁に起きる。しかし,ダイズは湛水条件下でも滅菌した土では出芽率の低下が起きず,卵菌類に効果のあるマンゼブ・メタラキシル剤を種子処理して播種すると土壌水分が高くても出芽率が向上する。出芽不良になった腐敗種子からは病原性のあるピシウム菌やフィトフトラ菌が分離され,湛水条件がある場合にのみ出芽不良を引き起こす。圃場排水を良くすること,播種位置を高くすること,卵菌類に効果のある殺菌剤を種子処理することにより安定した出芽が得られると期待できる。
(キーワード:ダイズ,出芽不良,ピシウム,フィトフトラ,殺菌剤)
←Vol.34インデックスページに戻る

ダイズ栽培における雑草防除技術と課題
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター    澁谷 知子
 ダイズ栽培における雑草防除の基本は,ダイズの草冠が地表面を覆うまでの除草剤と機械除草の組み合わせによる防除である。従来の体系で防除できない雑草対策として畦間処理,畦間・株間処理という除草剤の散布法が出てきた。難防除雑草のほとんどは生育期の選択性茎葉処理剤の効果が低い広葉の帰化雑草である。今後の課題として,雑草の生態や防除法の情報の共有化,総合的雑草防除の最適 化,畦畔等圃場周辺の防除の徹底があげられる。
(キーワード:ダイズ,除草必要期間,除草剤,帰化雑草)
←Vol.34インデックスページに戻る