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ランの仲間 表紙

ランの仲間

(ラン科 Orchidaceae


(1) Caladenia flava  (2) Caladenia geogei  (3) Caladenia huegelii
(4) Caladenia latifolia  (5) Diuris corymbosa  (6) Elythranthera emarginata
(7) Lyperanthus suaveolens  (8) Pterostylis barbata  (9) Thelymitra crinita


 ラン科は大家族なのでとても紹介しきれませんのでここでは、オーストラリアで出会ったランだけを紹介します。オーストラリアだけと言いましても、100属以上、約1,200種もが自生しています。 あまりオーストラリアがランの宝庫というイメージはなかったのですが、調べてみて種の多さと多様さに驚きました。

 その中で西オーストラリアには、約150種が自生しています。どれも小さい花なのでワイルドフラワー ウォッチングでも踏みつぶさないように注意が必要です。

 写真も這いつくばって撮りました。カメラのレンズで拡大して見るとオーストラリアのランの魅力も拡大しました。

 小さいながらも、ロバ、蜘蛛、人形、鳥、ハチなどに似た種まであり、そのアイデアには脱帽です。それにも増して妖精のような美しさには本当に感激しました。


(1)Caladenia flava(カラデニア フラヴァ)

カラデニア フラヴァ
Caladenia flava
 カラデニア属は、約70種がオーストラリアに自生する地生ランです。

 唇弁(リップ)は、触れると動く爪があります。

 Caladeniaという属名は、ギリシャ語で「美しい」を意味するkalosと「腺」を意味するadenに由来し、美しいは芯弁がカラフルなこと、腺は唇弁の突起のことを示しています。

 花の色は、黄の他、白、ピンク、紫などがあり、花弁は下垂しないタイプと下垂するタイプがあります。

 写真のフラヴァという種は、草丈は5〜30cm、花が2〜5cmで、これでもオーストラリアのランでは大きな花なのです。

 英名は、Cowslip orchidで、Cowslip はキバナノクリンザクラというサクラソウのことです。

 鮮やかな黄色の地色に赤い筋が入りますが、筋の量に変異が多いと聞いて、探して歩くと本当に一つ一つ違っていました。通常、 野生種の花の模様というのは安定して一定なのに本種は何故こんなに変異があるのか、オーストラリアの植物の不思議の一つです。

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(2)Caladenia geogei (カラデニア ゲオゲイ)

カラデニア ゲオゲイ
Caladenia geogei
 ゲオゲイは、オーストラリアのパースから南の海岸沿いに自生する種です。

 英名は、Tuart spider orchidで、Tuartはユーカリの一種で、spiderは花被片(セパルとペタル)が細長くて蜘蛛のようなので付けられました。

 スパイダー オーキッドと呼ばれているのは数種ありますが、本種については、正面から見ると蜘蛛というよりはかわいい人形のように見えますよね。

 草丈は、25〜50cmほどで、花の色は白地に赤、黄の模様が入ります。

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(3)Caladenia huegelii(カラデニア フエゲリィイ)

カラデニア フエゲリィイ
Caladenia geogei
 フエゲリィイという種は、英名で、King spider orchid と呼ばれるとおり草丈は、80cmほどもあり、オーストラリアのランの中では大きな方です。

 花もスパイダーオーキッドの中では大きく、手を広げたような形をしています。

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(4)Caladenia latifolia(カラデニア ラティフォリア)

カラデニア ラティフォリア
Caladenia latifolia
 ラティフォリアは、オーストラリア北部意外の比較的広範囲に分布する種です。

 写真で見られるようにピンクの可憐な花を咲かせるのでPink fairy orchid と呼ばれています。

 花は、2〜4cmぐらいで、色は淡いピンクから濃いピンクまでの変異があります。

 草丈は20〜45cmです。

 C. flavaC. latifoliaの間には交雑種があります。

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(5)Diuris corymbosa(ディウリス コリムボサ)

ディウリス コリムボサ
Diuris corymbosa
 ディウリス属は、東ティモールにある地域に特有の1つの種を除いては、オーストラリアとタスマニアに自生している地生ランです。

 本属は、ピンと立った側花弁をロバの耳と見立ててDonkey orchidと呼ばれたり、側花弁を尾と見立ててDouble tail orchidとも呼ばれています。種の英名は、ハチ、山羊、パンジーなどがありその発想がユニークです。

 ディウリスという属名は、ギリシアの語で「二倍の」を意味するdisと「尾」を意味するouraに由来し、英名と同様の意味です。

 オーストラリアのランは、うっかりすると踏みつぶしてしまうほど小さいので探すのが大変です。しかし、ディウリス属、テリミトラ属などは菌根菌という菌類がないと生育できず、 その菌根菌は特定の種類の木に生息しているのがわかっているので、これらのランを探すのにその木を探せば早く発見できます。

 花の色は黄、橙、褐、ピンク、紫、白があり多彩です。

 写真はコリムボサという種で、ドンキー オーキッドを代表する種なのでCommon donkey orchid と呼ばれています。

 草丈は30〜45cm、花の大きさは25mmほどで、黄色の地色に赤褐色で模様が入ります。

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(6)Elythranthera emarginata(エリトランテア エマルギナタ)

エリトランテア エマルギナタ
Elythranthera emarginata
 エリトランテア属は、西オーストラリア州 南西部の石灰岩やローム層地域などで見られる地生ランです。

 つやつやと光沢のある花弁が美しいのでPink enamel orchidと呼ばれています。

 草丈は、15〜20cm、花は5cmほどの大きさで、尖った花弁の縁が丸まって、末端ほど色が濃く紫色に近くなります。

 本種を図鑑の写真で見ていてワイルドフラワー ウォッチングではどうしても見たかった種の一つです。自然の花が本当にどの程度エナメルのように輝いているのかという興味がありました。 それで、探して見つけた時は本当にびっくりしました。光っているので遠くからでもその小さな花が見つけられました。エナメルのように光り輝いく花はまさに芸術品です。 でも、どうしてこんなに輝く必要があるのでしょうか。オーストラリアの謎がまた一つ増えました。

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(7)Lyperanthus suaveolens(リペランサス スアヴェオレンス)

リペランサス スアヴェオレンス
Lyperanthus suaveolens
 リペランサス属は、4種だけしかない珍しい種類で、オーストラリアの固有のランです。

 花は、濃茶色か赤茶色で芯弁(リップ)が黄色なので、英名もBrawn beaksと付けられています。

 リペランサスという属名も、ギリシア語の「陰気な, もの悲しい」を意味するlyperosと「花」を意味するanthosに由来し、花の色に由来しています。

 写真はスアヴェオレンスという種で、ラテン語の「香りがよい」を意味するsuaveolensに由来します。これは、本種がバニラの香りがするために付けられました。

 草丈は、45cmほどで、3cmほどの花が3〜8輪着きます。

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(8)Pterostylis barbata(プテロスティリス バルバタ)

プテロスティリス バルバタ
Pterostylis barbata
 プテロスティリス属は、約100種からなる地生ランで、ニュージーランド、オーストラリア、パプアニューギニアとニューカレドニアに自生しますが、ほとんどの種がオーストラリアの自生です。

 プテロスティリスという属名は、ギリシアの語で「翼」を意味するpteronと「ずい柱(ランの花の雄しべと雌しべが合体した柱状の器官)」を意味するstylisに由来します。

 草丈は20〜30cm、花の長さは4〜5cmです。

 写真のバルバタ種は、とても変わった形の花で緑のフードを被っているように見えるので、英名の一つはGreenhoodです。

 もう一つの英名は、Bird orchidで、横から見ると鳥にそっくりなところから付けられました。

 いったいどんな構造になっているのか、とよくよく見ましたら上の外花被片(ドーサルセパル)と下の外花被片(ラテラルセパル)が合体しているのです。

 更に、興味深いのは唇弁(リップ)に昆虫が止まると閉じて昆虫を閉じこめてしまい、それによって受粉させるという「運動するラン」なのです。

 まるで、鳥が餌の昆虫を食べるように見えます。ランが鳥に擬態したわけではないのですが、小さなランの大きなパフォーマンスですね。これはランの成し遂げた進化です。

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(9)Thelymitra crinita (テリミトラ クリニタ)

テリミトラ クリニタ
Thelymitra crinita
 テリミトラ属は、マレーシアからニュージーランドまで50種以上自生する地生ランです。

 テリミトラという属名は、ギリシャ語で「女性」を意味するthelysと「帽子」を意味するmitraに由来します。これは、花の中央にあるずい柱に付いている突起物によるものです。

 本属は、ラン科としては珍しい特徴が二つあります。一つは花弁(正確には花被片(セパルとペタル)と唇弁(リップ))が同じ形だということで、 初めて見たときはユリ科の植物のように見えました。ユリの花の花弁は6枚同じ形をしているからです。それもそのはずでした。このため、いくつかある英名の一つはLily orchidです。

 もう一つは、青色の花があるというこで、ラン科には青い花は非常に希で、英名の二つ目はBlue Lady Orchidです。

 しかし、本属には青色だけではなく鮮黄色、白色、黄色と褐色の複色の種もあります。

 本種の英名の三つ目は、Sun orchidで、これは、光が当たり気温が高い時だけ開花する性質があるためです。

 英名の最後はQueen Orchidですが、このように珍しく気品のあるランには相応しい付け方ですね。

 写真のクリニタという種は、1839年に植物学者ジョン リンドレーによって紹介されました。

 草高は70cmほどでまさに属を代表するような青い花を咲かせます。青い花はやはり憧れの花です。

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